もう何年も前の話になるが、美術館で仕事をしているブルックリン男性のLOFTへ友人とお招きにあずかった経験がある。およそ100年以上も前に建てられた工場をリノべーションしてアーティストのスタジオとして利用しているビルディング。ドアを開けてまず驚いたのが、壁一面に広がったビンテージの窓ガラスから広がる壮大なマンハッタンの景色だった。
まるで摩天楼というおもちゃ箱をキャンバスにしたような風景に息を飲み「なんて贅沢な場所で暮らしてるんだろう。」としか言葉が出ない。映画に出てきそうな壮大なキャンバスと共にわたしたちを楽しませたのは、ランダムに飾られた有名なアーティストのコレクション。ドアを開けてからの彼の一声は「どんなワインを飲もうか?」だった。
通常、こんな場面に遭遇したら普通の女の子は一目惚れをしてしまうかもしれない。でも我らブルックリン女性はここぞとばかりにアートに関しての質問をし始めた。色気がないわけではなく、好奇心が先に来るだけ。ブルックリン女性はその人の生き方を美しいと感じるのであり、ビジュアルではないのだ。
この紳士の経験や夢も是非語ってほしいと思い、もっと奥深い部分で共鳴し合いたいと感じた。でも面白い会話は楽しく弾んだけれど、この紳士はこの場所を利用して女性を落としたいとい考えが丸出しだったことが判明し、私たちはお互い顔を見合わせて何かが一致団結し、残念な気分でこの場所を去ることに。
表面的な美しさだけで心を奪われるほど、経験が足りないお嬢様ではブルックリン女性ではない。ですが、彼のセンスは絶賛しておこう、何より楽しいトリップだったことに変わりはないから。
その人の生き方を美しいと感じるのであり、ビジュアルではない。